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想い(PSU SS)

ありがとう!PSU!

その言葉を最後に、あの人はグラールの地を去って行きました。

時を同じく、ライア総裁から全ガーディアンズに向け、SEEDの残党並びにSEEDの影響を受けた原生生物全ての掃討が確認出来たとの知らせも届きました。
そして、グラールを股にかけた討伐隊としてのガーディアンズは9月27日24時を以て解散となることも…。


一夜明け、ライア総裁は新たなるガーディアンズの編成を開始しました。
これからのガーディアンズはグラール全域ではなく、主としてGコロニー内での自治を守るための組織になるのです。
パルムの自治は同盟軍、ニューデイズの自治はグラール教団、モトゥブの自治は…タイラーさんの元に集まった旧ローグスの方々といえばいいのでしょうか。
これからのガーディアンズは、各惑星の自治を担当する部隊の方々と連携を取りつつ、Gコロニー内での活動が主となる為、27日24時の時点でガーディアンズを解散し、28日以降の活動、そして主旨の変更に賛同出来る方に対してガーディアンズへの再加入を提案為さりました。

本部、そして惑星の支部勤めの方々をはじめ、多くのガーディアンズの面々が再編成されるガーディアンズに名乗りを上げ、ライア総裁の元に駆け付けた数は数千を下りません。
集った旧ガーディアンズの面々を前にライア総裁は「アンタら…」と絶句し呆れた表情をしたのですが、その目の隅に微かな涙が浮かんでいたようです。
活動内容が変わっても、ライア総裁の元でガーディアンズに所属し続けたいと思う人たちがこれほどまでに多いとは、ライア総裁も思っていなかったのでしょうね。
勿論再入隊には名乗りを上げず、ガーディアンズ入隊前の平穏なる暮らしに戻った人たちも数多くいます。
旧ガーディアンズ活動の際に降りた惑星が気に入って、Gコロニーから惑星に移住した方々もいます。
各々の惑星に降り、各々の惑星の自治を守る集団に身を置いた方も居るとの話も聞きました。
惑星間航行も多少の手続きはありますが、ほぼ自由となり、Gコロニーは日夜あちらこちらの惑星から届く、そして送る人や物資で賑わっています。

「平和になったグラールを旅してみようと思って」
そう言って手を振り船に乗られる方を見送りました。
「参拝癖が抜けないんだよなー」
苦笑を浮かべ、ニューデイズに移住する方を見送りもしました。
「種族差別は本当に撤廃されてるね、カーツ中尉最高!」
満面の笑みでパルム出身のヒューマンの方がそう言い、同盟軍での活動模様をビジフォンで伝えてきました。
「本当に結婚しちゃったんですよぅ…トニオさん…」
半べそを浮かべ、モトゥブの酒場で自棄酒を飲まれてる方も居ましたっけ。
翌日はケロリとした顔で「ボルロワイヤルに就職しちゃいましたよ~!キラキラピカピカでくらくらしちゃいますぅ」と言ってましたけど。
 …元気な様で良かったです。

あの人が去り、ガーディアンズが再編成され、SEEDの姿が無くなったグラールは、多少のいざこざも沢山の笑顔もある穏やかな時が流れていますよ。
歴戦の旧ガーディアンズの面々も、この世界で「自分としての」生活を営み始めています。
一部の方はグラールに留まる道を選ばず、「別の世界が呼んでいる」と言い残し、立ち去って行かれましたけども。


そうそう。
旧ガーディアンズから支給との形で渡されていたパートナーマシナリーですが。


「ご主人様ぁ!」
「『ご主人様』じゃないでしょう?」
「あぅ…そうでした」
旧ガーディアンズの拠点でもあったGコロニーではマシナリーの一人歩きが当たり前のように存在しています。
各惑星でもマシナリーの一人歩きはあるようですが、旧ガーディアンズとの関わりが薄かった方々にはマシナリーの存在自体が珍しい為、少々の奇異なる視線には晒されているようですね。
「それも楽しいですよ?」と笑うマシナリーも居れば、「ちょっと…恥ずかしいです…」と一人歩きを控えるマシナリーもいるとか。
彼らはあの日を境にパートナーマシナリーとの呼称では呼ばれなくなりました。
『マシナリー』として、彼等に独立権が与えられたのです。
マシナリーの存在を知らなかった一般の方々からは、キャストの派生種族との認識で「子キャスト」と呼ばれることも多いとか。
ビーストには成人しても小さな背丈のままの子ビースト種が居るのですから、人よりも小さな姿のマシナリーを子キャスト種として捉えるのも不思議ではないのかも知れませんね。
Gコロニー以外ではまだ珍しい彼等ですが、各惑星の自治団体の協力の元、受け入れ体制は整い始めているようです。
好奇の目に晒されるのも、暫く経てばなくなるのではないでしょうか。
それまでは少し我慢、ですね。

「GRM社から帰ってきたところなんですよー。ヒューガさんは相変わらずで、マヤさんがちょっとイラッとしてました!」
「…マヤさんの目の前でナンパ…とか?」
「受付の女の子に『お茶でもいかがですか?』って言ってました!」
社長が部下をお茶に誘うのは悪くはないですけど、ヒューガさんの場合は…。
マヤさんのご苦労がありありと浮かびます。
「システムには問題無し! なので、週毎ではなく月毎、ちょっと間をおいて2か月おき位にしてもいいかな? って言われました!」
独立権を得た後も旧ガーディアンズと共に暮らす道を選んだマシナリーは、ガーディアンズで定期的なシステムメンテナンスを行っていますが、旧ガーディアンズと別れて生活してるマシナリーは、GRM社にて定期メンテナンスを行う事が今のところ義務付けられています。
「ずいぶん間が空くのね?」
「メンテナンスをGRM社にするマシナリーも増えて来たみたいで、順番待ちも多くなってるみたいなんですよー?」
GRM社にとっては大変でしょうけど、マシナリーの自立が増えてきた事は良い傾向でしょう。
「で、で。考えたんですけど。私、パルムに移住してみようかな? って思うんです」
その言葉に目を丸くしてると、マシナリーは少しもじもじとしながら言葉を続けました。
「ご主人様とは別に暮らしてますけど、まだ生活する費用とかはご主人様に頼っているじゃないですか」
Gコロニーをはじめ、各惑星でマシナリー自立の為の受け入れ体制を整えていても、受け入れる側に戸惑いがあるのが現状です。
旧ガーディアンズを辞めた方々に混じってのマシナリーの独立ですから、マシナリーの就職活動が割を食ってしまっているというのもありますし、この子のようにパートナーマシナリー時代が抜けきれず、「ご主人様」と呼ぶ子も多いので、『あの日を境に他人』と突き放しきれず、居住だけは別にして扶養は続けるという、私の様なパターンも多いのです。
勿論、旧ガーディアンズ時代の関係をそのままに、マシナリーと家族手続きを申請した方々もいらっしゃります。
「今回のメンテナンスはお泊りありの夕方からだったので、早めに行ってグリングリンファームさんにご挨拶に行ってきたんですよ」
「カラム君とノルフェさんはお元気でしたか?」
「はい!」
笑顔で答え、「それで」と言葉を続けるマシナリー。
「新商品のコルトバミルクプリンと濃厚無添加コルトバチーズが大ヒットで人手が足りない~って」
小さな体をバタバタさせて慌ただしそうな様子を再現。
「だから、お手伝いしようって思ったんです。従業員宿舎の拡張はまだだけど、宿舎が整うまで一緒に住んでも良いなら是非にって仰ってくれて」
目を輝かせて私を見つめるマシナリー。
その瞳に胸の奥がチクリと痛みました。
27日24時、私があの人の手から巣立ったのと同じく、今この時が私の手からマシナリーが巣立つ時なのでしょう。
あの人が笑顔で見送ってくれたように、私もマシナリーの巣立ちを笑顔で迎えなければ、あの人に申し訳ないですね。
「コルトバ、大好きだものね」
「はい!」
「扶養手続、解除しなくちゃね?」
言うと、虚を突かれたような表情になるマシナリー。
「これからは、家族じゃなくてお友達。だから、『ご主人様』は本当になしですよ?」
服の端をぎゅっと握り、下を向いてしばらくの沈黙。
小さな声で「うん、うん」と何度か呟いたり頷いたりし、私に向けた表情は涙を浮かべた精いっぱいの笑顔。
「今まで、いっぱい、いっぱい、有難う御座いました、ご主人様」
間髪入れずに鼻をすすってもう一声。
「これからはお友達として仲良くしてください」
そして小さな頭を下げて、たどたどしく、そして言い難そうに私の名前を囁く。


私たちのグラールは、あの人と共に守ったこの世界は、日々様々な出来事を繰り返し、穏やかに変化しています。

グラールを守ってくれてありがとう。




私たちはこの世界で幸せに暮らしています。




20120816_01.jpg

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9月中にUPしておきたかったSSです。
これが最初で最後のPSUのSS。
SSを書く事はないだろうと思っていたのに、どうしても書きたくなったのでした。
(※UPした後にもう一度読み返して「?」となった点の修正や写真を追加しました)

私の1stがキャス子だったので、語っているキャラはやや女性の口調ですが、性別や癖などを真っ新に近い状態で「見て(読んで)いるあなた」の「キャラクター」が「あなた」に向けた想いになる様心掛けてみました。
写真だけはスイマセン。キャラが写ってない写真の撮影が出来てなかったので、過去にUPしたものの中から引っ張り出してきました。
また、最後の方で出てくるマシナリーはマシナリー毎に特徴がありすぎて「あれ?」と思われるかもしれませんが、「あなたのキャラに付いていたパートナーマシナリー」、若しくは、「あなたではない別の誰かのマシナリー」の小さな独立のエピソードと思って頂ければ幸いです。

グラールのその後は、人によって「そこで終った」「まだ続いてる」「SEEDとまだ戦ってる」等色々あるとは思いますが、私の考え(設定)では、何度もPSU記事にて書き記している通り「SEEDの脅威から完全に逃れ、真なる平和が訪れた」となっておりますので、この様なSSとなりました。


これを以て最後のPSU関連の記事にするかどうかは正直まだ疑問です。
キャラ紹介の記事に手放せなかった武器の写真を載せてみようかな? とか、最後までにやったカスタマイズも載せたいかな? とは思っていますが、撮りためた写真を眺めているとそれだけで胸がいっぱいになってくる現状で御座いますので。
何時まで尾を引いてるんだよ、と我ながら思いますけども。


最後に。
久し振り(何年ぶりだよ!)のSSで色々おかしな点もあるでしょうが、読んで下さった方に感謝いたします。

そして改めて「大好きでした、MYキャラの面々!」。
交流を持てたキャラの皆様と共に楽しく平和に暮らして行って下さいね!

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『親愛なる貴方へ』(SS)

「困ったなぁ…」
そう、私は何度目かの言葉を呟き、息を落とした。

『彼』とは10年近くの付き合いになるだろう。
付き合いと言っても男女のそれではなく友人のそれだ。
対人関係の希薄な私に比べると、彼の交友関係は驚くほど広い。
始終にこやかな彼が、寡黙で無愛想な私に付き纏うとの関係ではあったが、友人のいない私には彼が唯一の友人であろうと思う。
逆に、彼から見れば私は珍奇な知り合いの一人であったのかも知れない。
まぁ、以前彼のコレクション部屋に入った際「これを見せられる女性は留美亜先輩だけですよ」なんて、本気かどうかは解らない台詞を吐いていたので、多少は彼の中でも私は特別な存在なのだろう。
穿ってみれば、言い触らす程の知人がいない私だからこそ見せる事が出来たとも推測出来るが。
真実は闇の中だ。

そんな訳で、私と彼は10年近くの間親交を深めていた。
彼が私を誘い、それに応じるとの形ばかりではあったけれども。
それでも「風邪で伏せっている」との話を聞けば、互いに一人暮らしの身の上、身の回りの世話を焼く位の情はある。
彼は活動的な反面、年に数度は寝込むとの弱さも持ち合わせていた為、彼の家の台所のどこに何があるか位は理解している。
彼は私が家に来た事を隠しもしなかったし、私も否定しはしなかった。する必要がなかったからだ。
そして、私達は当時週に最低1度は共に夕食を食べに出かけていたし、休日に共に出かける事も多かった。
其れ故、周囲からは男女関係を噂されていた様だ。
実際、昨年退社をする際上司から「結婚するのか?」と尋ねられた事もある。
しかし、私達は友人であった。

彼には私と出会う前からずっと慕っている女性が居たからだ。

実らない片思いを10数年にも渡って抱えているのは珍奇な事だろうか。
傍らでそれを見続けていた私には、彼の煩悶がこの上なく貴重な物に思えた。
私は一つの事柄に熱意を傾ける感情が薄い。
否、人に愛情を注ぐとの感覚を持っていないのだ。
故に彼のその思いを見ていると、何かとても羨ましく感じられた。
叶わない思いを忘れようとする様。
しかし忘れられず、それでも相手の幸せを渇望する姿。
相手の幸せと自分の願いが重ならぬ事を嘆き、幾夜彼は酔いつぶれただろう。

明るく和やかな彼の裏に隠された悩みを知るのは私だけだったのだと思う。
彼にとって私の存在は、叶う筈のない相手への思いを断ち切らせる為の切り札だったのだろうか。
けれど、私の中には他者へと向ける愛情が欠落している。
決して恋人になりえない女である私。
それを彼は私との親交を深めていく中で理解し、ならば何でも吐露出来る他人でありながら身内に近しい存在として私を求めたのかも知れない。
吐露した思いを決して漏らさない相手。
そう言う点ならば、恐らくは彼の友人の中で私が最も適していたのだと、我ながら思う。

「ねぇ先輩…俺、どういう顔で居ればいいんでしょうかねぇ…」
それは数ヶ月前の夜。
退社してからは会う機会が減っていた。
とは言っても、2ヶ月に1度以上は会っていた気がするが。
暫くすれば彼の誕生日。
貰う一方では失礼だからとの理由で、私からも彼に贈り物をしている。
そろそろこちらから連絡を入れて、欲しい物を尋ねようと思っていた矢先だった。
事前に必ず連絡を入れてくる彼にしては珍しく、突然尋ねてきたのが記憶に鮮明だった。
いや、確かに連絡が無い事にも驚いたが、彼の表情が暗すぎたので、そちらの方で強い印象を抱いたのだと思う。
一目見てただ事ではないと感じた。
そして、誘われるままに食事を共にし、彼の部屋に場所を変え、酒を飲みつつ彼のその言葉を聞いたのだった。
「最悪の誕生日ですよ」
酔いつぶれる前に彼はそう囁き、私は今年の贈り物を決めたのだった。

そして今日は彼の誕生日である。

最善の物を用意したつもりだった。
これを見れば喜ぶだろうと思った。
しかし其れは甘かったようだ。

どうも私は人様と感覚が異なっているらしい。
それは今に始まった事ではないが、今日ほどそれを痛感した事はない。

彼は私からの贈り物を一目見て驚き叫び、私を罵倒した。
それがとても悲しい。
どれだけ私が苦労してこれを入手したのか。
彼はそれを解ろうとはしなかった。
私を罵り、掴みかかり…。
……


「さて、困ったな」
幾度となく繰り返す言葉。
私の眼前には2つの大きすぎる物がある。
私には彼の様に人形を愛でる趣味はない。
彼のコレクション部屋には数多の人形があった。
掌に載るものから等身大のものまで。
だからこそ、この贈り物をすれば彼は喜ぶだろうと思ったのだが。

この一体を運んだ労力を思い出すと、動かすのが億劫になる。

「さて、どうしよう」
私は似たような言葉を何度となく繰り返し。

彼の兄の為に純白の衣装に身を包んだ其れと、彼であった其れを眺めつつ、私は途方に暮れる。



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夏なのでホラーちっくなモノを。
あれ? この文面デジャブが…。ってー、前に載せたのもこの手の物でしたよ、奥さん!
こう言うものしか書けないのか私はー orz
性根が暗いんですよ、きっと(つд`)

書きながら一つだけ自身ですげー突っ込みたかった事。
弟の誕生日に結婚式をする兄とはどういう物か。
双子の兄って設定にすれば良かったか? とか書き終えた後にフト思ってみる。
若しくは彼女が彼と同じ誕生日だったとの裏設定で!(わぁ
うーん…練り込みが甘かったか…。
大概、思いついた勢いで書いてるからな、私は。
とか書いて、文章の拙さの言い訳にしてみる orz

どの頭でこういう物を思いつくのか、自身に問いかけたい一作(ちゅ程の物ではないですが)でした。

以前拍手(だったっけ?)で「期待してる」みたいな事を書かれた方。
こんな話でも良いんですかー? 良いんですかぁ(><)

オチはグロテスク(多分)。
読んでいて不快になられても後の祭。


誤って目を通された方、申し訳ないです。

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『見えなければ いいのに』(SS)

-3日も経てば臭うだろう-

一昨日の涼しさは何処やら。昨日今日と暑い日が続いている。

2日連続で仮眠室から出てきた私を新入社員は驚いた眼差しで見つめていた。
忙しくないと言えば嘘になるが、会社に寝泊りをしなければならない忙しさではない。
けれど、私は何かと理由をつけて2日間会社に泊まっていた。
しかしそれも今日までだ。
明日は休日。
幾ら頭を働かせても、休日に会社に泊まりこまねばならない仕事を見つける事は出来ず、私は仕方なしに定時から2時間遅れで会社を出た。
だから今日は帰らねばならない。


額に浮かんだ汗をシャツの袖で拭うと、鼻腔に僅かな臭気を感じた。

-あぁ、臭う-

泊まる用意などしていなかったから、シャツもスーツも替えはしていない。
若い女性社員が今日はあまり近くに来なかったなと思い出して、苦笑いが込み上げてきた。
人は誰しも己の臭いには愚鈍だ。
しかし他人の臭いには敏感なのだ。

故にやはり私は今日こそ帰らねばならないのだろう。

そうは思っても、この照明を落とした薄暗い酒の臭いの蔓延する場所から腰を上げる踏ん切りがつかずに居た。

そんな時。

「人間にはそう言う傾向があるんだってさ」
二つ椅子を挟んだ隣の席に座ってる男の声が私の耳に届いた。
「俺も聞いた話なんでよくは理解してないんだけど、心理学的に言うならば『ゲシュタルトの法則』ってのらしいんだ」
男はこちらに背を向けて、隣の男と話をしているようだ。
口を開いてる男は四角い紙を手にしている。
目を凝らすとその紙は写真のようだった。
男は手に持ったそれを見つつ話しているのだが、こちらに背を向けているので、私からも写っているものがうっすらと確認出来る。
小さな娘と大人が2人。
着飾っているので何かの祝いで撮った物なのだろう。
「不規則なパターンの中の特定の部位を意味のあるものとして知覚してしまう、だったかな?」
男はそう言って腕を動かす。
私の視界から写真は消えた。
男は写真を机の上に置き、相手の男に見せているのだろう。
「この場合はここだよな。偶々同じ様な丸模様が目に見えて、その下にいびつだけど大きな影があったから口に見えた。だから顔として認識してしまった」
男の腕が更に動く。
「どれか一つを隠してみれば、何の事も無い只の影だ」
相手の男の視線は話してる男の手元に落とされている。
「良くあるじゃないか。天井の節目を見て『顔に見えるな』とか」
男はそこで少しだけ間を空けて、再度口を開く。
「人面に見える木、一部の模様が顔に見えた魚とか猫とかさ」
「あぁ」と小さく相手の男が息とも取れる声を落す。
「だからこれもそれと同じで気に病む必要はないだろうってのがアイツの見解」
どうやら写真に写った物に顔らしきものがあって、それを気にした男が話してる男に相談を持ちかけていたのだろう。
そして相談を持ちかけられた男はその手の話に通じている第三者に意見を聞いてきて、それをここで披露しているのだ。
しかし、聞いている男の顔色は一向に優れない。
数瞬見た写真に写った大人の片方が顔色の優れないその男だと私は気付いた。
あの写真に写っているのはこの顔色の悪い男とその妻と娘か。
祝いの写真に見えたそれに、気になる物を見つけてしまって一応は納得できる説明を受けはしたが、完全には不安を拭いきれないのだろう。
祝いの写真なら捨てる訳にもいくまい。
「どうしても気になるって言うなら、アイツの知り合いにこの手の写真を見慣れた写真家が居るから紹介しても良いとは言ってたけど」
男はそこで言葉を濁す。
相手の男は「あぁ」と濁した言葉に理解の言葉を発した。
「それは先生の見識眼を疑う事になるんだな」
男が口に乗せた『アイツ』とは『先生』と呼ばれる人物らしい。
そしてその『先生』は少々気難しいのだろう。
「気にはしないと思うんだけどなぁ…」
男は首を掻く。
言葉尻から苦笑いをしたのだろうと推測出来た。
暫しの間、そして再度口を開いたのは私に背を向けている男。
「美耶子さんがどうしてもそれで納得出来ないって言うのなら」
『美耶子』と言うのは写真に写っている大人のもう一人か。
男は喋りながら腕を動かす。
おそらくは写真のある箇所を指差したのだろう。
「ここは神社で神聖な場所だ。そこで撮った写真に不浄なものは写らないだろう。だからこれは元々ここに居る何かか、若しくは君たちに好意を抱いてる何者かか。どちらにせよ決して悪いものではない」
ふわりと男の口調が柔らか味を増す。
「だから、安心して構わない」
話を聞いていた男の顔に明かりが僅かに戻った。
どうやら男は自分が気になるから相談を持ちかけたのではなく、『美耶子』と言う、多分写真に写ってる妻に相談を持ちかけられて、この男に打ち明けたのだろう。
「…ま、これもアイツの言葉なんだけどな」
この男は相談役ではなく、橋を架ける役割だったのだ。
「どうしても気になるなら悪い方へ考えるのではなく良い方に考えれば良いさ。折角の七五三の写真だ。イヤだと思って眺めるのはお前達に取っても本望じゃないだろう?」
「--あぁ、そうだな」
そこまで聞いて、カラン、と手元のグラスの中の氷が小さな音を立てた。
我に返った私の耳に、周囲の喧騒が紛れ込んでくる。
彼等はまだ何か話してるようだが、耳を済ませないと一字一句まで聞き取れない。
グラスの氷に盗み聞きを咎められた気がして、私は苦笑いを浮かべつつ手元のそれを一気に喉に流し込んだ。
随分と温くなった酒が胃に広がり、私は席を立つ踏ん切りがついた。
「気になるのなら悪い方ではなく良い方に考えればいい、か」
小さく言葉を落す。
誰にも聞き取れないような小さな声。
良い事を聞かせてもらった気がする。


そして、私は3日振りの我が家に帰る決意を固めた。


家までは電車で2時間。
仮住まいとして借りたマンションの一室。
早く持ち家が欲しいとせがむ妻を宥めつつ借りた狭いマンション。
鍵を開けると締め切った部屋の熱気が伝わって来て全身から一気に汗が噴出した。
中に入り扉を閉じ、靴を脱ぐ前に鼻に意識を集中させる。

-やはり、少し臭う気がする-

けれど、まだ気になるほどではない。

駅に入る前に買った物資を持ったまま私は風呂場へ足を伸ばす。
服を脱ぎ裸になって浴室に入る前に、汗の浮かんだ身体をシャツで拭って着ていたもの全てを洗濯槽に投げ込む。
妻が気付いたのなら眉を上げ怒るような行為だが、もう気にせずともいい。
風呂場に入り、濁り切った水が張られた浴槽の栓を抜く。

抜けていく濁った水の中から浮かび上がるもの。

どう見ても錯覚ではありえないが、数時間前にバーで男が語った言葉を私は脳裏で反芻する。
-不規則なパターンの中の特定の部位を意味のあるものとして知覚してしまう-
-良くあるじゃないか。天井の節目を見て『顔に見えるな』とか、人面に見える木、一部の模様が顔に見えた魚とか猫とかさ-
だからこれもそれなんだろう。

水が抜け、浴槽に沈んでいた物体が露わになる。

露わになったものは人に見えるが、これは私の目がそう錯覚しているだけで人ではない。


そして私は袋の中から買ってきたものを取り出す。




-僅かに臭い始めたマネキンを捨てるには、小さくしないといけないのだ-

 



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夏も近いので何となくホラーちっくな物を。
ってか、以前(何年前だ)もホラーっぽいのを書いた記憶がー orz
「ゲシュタルトの法則」ってのは以前どこかで聞いた気がしてましたが、正式な名称を思い出せず「うーん、うーん」と唸ってました。
そして巡り合ったあの本。
その中に書かれてた短編で「これだー! 思い出したー!!」(いや、思い出したって言うのか? ソレ)と喜び勇んで。
そしてやっと形にすることが出来ました。

相変わらず独りよがりなヘタクソ文章ですけども、話っぽいものを書けて面白かったです^^
読んで面白いかは解りませんけども。
これ以外にも微ホラーめいたものがストック(脳内に)あるので、後々形に出来ましたらUPしてみようかと。
でも高峰は口だけの人なので期待は厳禁。
期待する人は居ないでしょうけどね!

僅かにでも寒さを感じて頂けたら幸いです。


因みに高峰はホラーはあまり好きじゃないです。
ホラー映画とかサスペンス系とか「見たくねー!」と思ってる人です。はい。

2009/0507 改行や行開けが思っていたように反映されていなかった事に気付きましたので、その点のみ修正を施しました。

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気侭にGIFアイコンを作成する事もありますが配布を目的としてはおりません。
記事内でのお知り合い様のお名前はイニシャルにて表記する様心掛けております。それ故、同表記となってしまう方も居ります事、前以てお詫び致します。

管理人紹介

名前:高峰 秋良

ゲームと読書が好きなインドア体質のヲタ社会人orz
誤字脱字勘違い多し。


現在プレイ中のゲームはPSO2。
いつまで経っても初心者級をモットーに(つд`)こそこそモタモタ冒険中。

PSO2 MYキャラ(2019/05/18現在)
1st 深冬 ニューマン男
Fo90 Te90 Hu90 Fi90 Ra90 Gu90 Br90 Bo90 Su90 Hr90 Ph90
 ⇒ロッドメインのテク職 ヽ(´▽`)ノ
 ・サポパ3体
2nd セラフィーヌ ニューマン女
Fo90 Te90 Hu90 Fi90 Ra90 Gu90 Br90 Bo90 Su90 Hr90 Ph90
 ⇒タリスメインのテク職 (*゚▽゚*)
 ・サポパ2体
3rd Kalpa デューマン女
Te90 Hu90 Su90 Fi90 Ra90 Gu90 Fo90 Br90 Bo90 Hr90 Ph90
 ⇒脳死殴りTe (´-ω-`)
 ・サポパ3体
4th ぷらむ ヒューマン男
Bo90 Hu90 Fi90 Ra90 Gu90 Fo90 Te90 Br90 Su90 Hr90 Ph90
 ⇒ブーツ粘着Bo(;'∀')
 ・サポパ2体
…+倉庫キャラ3人(全員Hr90)


読む本は国産ミステリーメイン。
社会派よりも本格派。
けれど探偵の活躍に一喜一憂なので、読みながら謎を解こうとの意思は薄い、なんちゃってミステリーFAN(またはミーハーミステリーFAN)。

こっそりんく

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